原発性多汗症
本来、発汗(汗をかくこと)は体温調節のための機能ですが、その範囲を超えて汗をかきすぎてしまうことを「多汗症」といいます。
更年期障害や、ホルモンバランスの乱れ、神経の病気などが原因で起こることもある多汗症ですが、明らかな原因のないものは「原発性多汗症」と呼ばれています。
全身で発汗が過剰になる全身性多汗症と、からだの一部の発汗が過剰になる局所多汗症があり、掌蹠(しょうせき/手のひら、足の裏)多汗症や、腋窩(えきか/わきの下)多汗症などがあります。
診断
汗かきと多汗症の線引きは難しいですが、大量の発汗により日常生活に支障をきたしているかどうかが診断基準のひとつとなります(原発性局所多汗症診療ガイドラインより)。
「汗をかきすぎてしまうことで人前に出づらい」「頻繁に服に染みがついてしまい困っている」など、発汗によりなんらかの不便を抱えている方はまずは一度ご相談ください。
治療
症状の出ている場所によって治療法を選択していきます。ガイドラインに記載されている治療法には次のようなものがあります。
塩化アルミニウム外用
塩化アルミニウム溶液を皮膚に塗ります。腋窩多汗症に対して有効、掌蹠多汗症に対しては第一選択とされています。
塗るときは、多汗部位の水気をとり、よく乾燥させてから塗布し、効果が出るまでには2~3週間継続します。寝る前に塗って、朝起きてから洗い流すのが効果的です。
イオントフォレーシス
手・足を水に浸しながら電流を流す治療法です。掌蹠多汗症に対しては非常に有効とされ、推奨されています。
効果を維持するためには週1~2回行った方がよいとされています。保険適応です。
ボツリヌス毒素局所注射
ボツリヌス毒素は神経シナプスに作用する神経毒素で、神経の電気信号を邪魔して、神経の興奮を阻害することによって効果を発揮します。
名前に「毒素」とありますが、脳梗塞の後遺症である痙縮のリハビリテーションから、美容目的のしわ取りまで幅広く使用されています。
掌蹠多汗症、腋窩多汗症、いずれにも有効とされています。非常に高価な治療法ですが、重症の原発性腋窩多汗症に対しては保険適応です。
当院でも行っています。お気軽にご相談ください。
交感神経遮断術
胸部の交感神経節を切り取る、あるいは高周波で焼き切る治療法です。全身麻酔を施したうえで、内視鏡下で行われます。
手のひらの多汗症に対しては非常に有効とされています。安全性も高い治療法ですが、代償性の発汗といって他部位からの発汗が増えることもあり、注意が必要です。
当院では手術は行っていません。